Drawing, Touching — The Moment of Perspective’s Disappearance

本作は、光によって物体を走査し記録するスキャナー装置を用いて、手と鉛筆という身近なモチーフを記録した一枚の写真作品である。
撮影中、モチーフは必然的にスキャナー面に触れている。ガラス面を横断して動く光源が、対象を一方向から“なぞる”ことで画像を生成していく。

スキャナーはカメラのようにレンズやファインダーを通して構図を選び取る装置ではない。むしろ、構図決定という意識的な選定の行為から離れ、物質の表面をなぞる運動そのものを記録する装置である。ここでは、対象と装置、そして撮影者の手の動きが直接的に交わり、わずかな速度差や圧力の変化によって形は歪み、同じ部位が複数回走査される。その結果、異なる角度や走査の痕跡が一枚の画面の中で重なり合う。

こうして生成された像は、多視点的でありながら、どこから見た像なのかを特定できない。視点が拡散し、重なった結果、視点という座標そのものが意味を失う――多視点の果てに訪れる視点の消失である。

映り込んでいるのは、指先と鉛筆だ。それらは被写体として意図的に撮影されたものではなく、撓み、分離し、重なり合いながら通過していく偶然の触覚的な痕跡として浮かび上がる。紙の上で手がこすれて、描いた線がやわらかく滲むように、「描くこと」と「触れること」はここで区別されず、視覚は線ではなく圧力や湿度のような皮膚感覚とともに立ち上がる。

本来は正確で安定した像の供給を目的として設計された記録装置に、接触という身体的な偶発が滑り込むとき、像は一点透視図法や構図の支配から逸脱し、わずかなほころびを生じさせる。そこに現れるのは「触れてしまった」ことで立ち上がる偶然の痕跡である。

本作は、そのほころびの記録である。接触によって装置の枠組みがわずかにほぐれ、視点が溶けて行方を失った瞬間――多視点でありながら視点を持たない像が、不意に立ち現れる瞬間を捉えている。

Photograph
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Release date: 2024
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© YOSUKE SUGAWARA
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